新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

民事再生法〜「そごう」に続け!〜

弁護士田邊正紀 

平成12年4月1日から民事再生法が施行されました。同法は,経済的に窮地にある債務者について,債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的とした法律です。

この法律は,デパート業界大手の「そごう」が利用したことで,一躍有名になりましたので,名前を聞いたことがあるという方も多いと思います。

これまでは,企業が倒産に瀕した場合に再建を図る方策として,会社生法に基づく更生申立か,和議法に基づく和議申立が一般的に選択されていましたが,平成12年4月1日からは,和議法が廃止され,和議申立に代わって民事再生法に基づく再生申立が利用されることになりました。

民事再生法においても,和議法上採用されていた裁判所の関与のもと,一定数の債権者の同意を得て,従前の債務の一部免除を受けたり,分割弁済をしていくという基本的な枠組みは変わっていませんが,和議法において問題とされていた点を中心に様々な改正がされています。

以下,和議法と比較した大まかな特色について説明します。


1.これまでの和議手続においては,和議条件の可決要件が,債権者集会への出席債権者の2分の1以上かつ届出債権額の4分の3以上と厳格であったため,主要債権者の協力が得られなければ,和議認可に至ることは困難でした。そこで,民事再生法では,再生計画案の可決要件を出席債権者の2分の1以上かつ届出債権額の2分の1以上と緩和し,一部債権者の協力が得られない場合でも再生計画の認可決定が得られるようになりました。但し,やはり多くの債権者の協力が得られなければ,最終的な企業再建成できないことはこれまでと同様です。


2.和議手続においては,和議条件の履行には裁判所の監督が及ばなかったことから,和議債務の支払がなされないという事態が多発していました。そこで,民事再生法では,この点を改め,再建計画の認可後も一定の場合には3年間裁判所による監督を継続できることとなりました。債権者としては,以前よりも,少しは安心して再建計画に同意することができることになったと言えます。


3.和議手続においては担保権について,その実行を阻止する手段が整備されていなかったため,担保権者の同意を得なければ事実上再建は不可能でした。そこで,民事再生法では,担保権実行としての競売手続の中止を命ずることができることとし,事業継続に必要な物件に関する担保権については,時価相当額を支払って消滅させることができることとなりました。これにより,事業用不動産等を担保に取られている債務者の再建も可能になりました。


4.その他にも,申立要件の緩和,簡易再生手続や同意再生手続といった手軽な手続の導入,否認権制度の導入等利用者側に配慮した改正の他,事件記録の原則公開,一定の場合に債務者の財産管理処 を管財人に移行させる,債権者委員会の任意設置,一定の場合を除き再生債権者表による強制執行を可能にする等債権者側に配慮した改正も多くなされています。


最後に再生を申し立てる場合,取引先が再生申立をした場合の注意点について述べておきます。

まず,再生を申し立てる場合には,数ヶ月間,現金での仕入れや従業員の給与を払っていく資金力がある段階で弁護士に相談することが肝要です。そうしなければ,再生申立後,再生計画が認可されるまでの間に取引先や従業員が散逸してしまい事実上再建が不可能となってしまうからです。

逆に,取引先が再生申し立てをした場合には,和議法の時代と異なり,再生申立後の債権は再生計画に従わず,優先的に支払われることとなりましたので,取引先を救済したいと考える場合には,取引を継続しても以前ほどの危険はなくなりました。また,再生計画への同意については,免除の割合の大きさに腹を立てるのではなく,破産の場合に配当されるであろう金額と比較して冷静な対応をすべきです。

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