新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

あなたが犯罪の被害にあったらどうしますか?

弁護士田邊正紀 

最近の「犯罪者の人権の保護に比べて,犯罪被害者の保護が薄すぎるのではないか」との議論を受けて,今般,様々な犯罪被害者保護のための法整備がなされました。以下に,その主なものをQ&A方式であげてみましたので,もしあなたが犯罪の被害者になってしまった場合の参考にしてみてください。


Q1 私は,7ヶ月前に強姦の被害にあってしまいましたが,被害届を出すべきか迷っているうちに現在にいたってしまいました。どうしたらよいでしょうか。

A1 警察へ告訴すべきです。強姦罪は,親告罪ですから,あなたが告訴しなければ警察は何もすることができません。従前の刑事訴訟法では,告訴期間は6ヶ月とされていましたが,今回の改正で性犯罪に関する告訴期間の制限は撤廃されましたので,今からでも遅くはありません。


Q2 私は,勇気を出して告訴をしましたが,法廷で証言しなければならなくなってしまいました。公開の場所でしかも犯人の目の前で強姦の事実を話すのは,不安です。良い方法はないでしょうか。

A2 今回の改正で,あなたが証言する際,裁判所の許可を得れば,お父さんやお母さん等に付き添ってもらうことができることになりました。また,犯人や傍聴席との間に「ついたて」を置いてもらうこともできるようになりました。さらに,どうしても犯人と同じ法廷に入ることができないのであれば,別室でビデオカメラに向かって証言することもできるようになりました。証言を依頼した検察官に相談してみましょう。


Q3 私は,この強姦犯人の裁判を傍聴して,裁判の成り行きを見たいのですが,傍聴席はいつもいっぱいで座ることができません。どうしたらよいでしょうか。

A3 今回施行されたいわゆる犯罪被害者保護法により,裁判長に申し出れば,被害者等が傍聴できるよう配慮してもらえるようになりました。裁判所の事務官に相談してみましょう。


Q4 裁判を傍聴していたところ,犯人は言い訳ばかりして,どうも軽い判決になってしまいそうです。何か重い処罰をしてもらうためにできることはありませんか。

A4 今回の改正で,被害者に心情その他の陳述権が認められました。したがって,検察官に申し出れば,法廷で被害を受けたあなたの被害感情や処罰感情をアピールすることができるようになりました。


Q5 裁判を起こす前に犯人との間で,慰謝料を分割払いしてもらう示談が成立し,示談書の取り交わしもしました。これで,安心して慰謝料の支払いを受けられると思ってよいのでしょうか。

A5 示談書だけでは,もし慰謝料が支払われなかった場合,改めて民事裁判を起こして判決をもらわなければ,強制執行をすることはできません。この不都合を解消するために,犯罪被害者保護法で,「刑事訴訟手続における和解」の制度ができました。これを刑事裁判所に申立て,和解内容が公判調書に記載された場合には,民事の裁判上の和解と同一の効力を有し,改めて裁判をすることなく,強制執行が可能となりました。


これら以外にも,犯罪被害者保護のための様々な制度が存在しています。もし,不幸にも犯罪の被害にあってしまいお困りの場合には,弁護士に相談することも一つの方法です。弁護士は,犯罪者を弁護するだけでなく,犯罪被害者保護の分野にも力を入れて活動しています。

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