新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

個人再生手続〜平成13年4月1日施行〜

弁護士田邊正紀 
個人再生手続 〜払えない。でも破産したくない・・・。〜

平成13年4月1日に民事再生法の特則として,個人再生手続が創設されました。

これまでは,個人の方が,多額の借金を負って,これを支払っていくことができない場合には,大まかにいって,弁護士に依頼して任意整理を行うか,裁判所に自己破産を申し立てるしか選択肢がありませんでした。

しかしながら,任意整理では,個別に債権者と交渉する必要があるため解決までに時間と労力が必要であり,また,借入元本の全額を長期間の分割で支払っていく形の合意が多く,途中で再度支払いに行き詰まることも少なくありませんでした。

また,自己破産の場合には,申立を行うとこれまで行っていた事業を廃止しなければならない,全く負債を支払わずに免責を得られる可能性がある反面,浪費等があると免責が得られない等のデメリットもありました。

そこで,今回,裁判所の関与のもと,計画を立てて短期間債務の支払を行うことによって,残債務の免除という効果を得られる手続を創設したわけです。

今回導入された個人再生手続は大まかに3つの制度に分かれます。


1.小規模個人再生手続

将来継続的に収入を得る見込みのある人で,担保のついていない債権の額が3000万円を超えない人が申し立てることができます。

実際には,小規模個人事業主や農業経営者等が申し立てることが見込まれています。

申立人は,原則として自分の支払うことのできる範囲内で3年間の分割払いを内容とする再生計画案を作成し,これに積極的に反対する債権者が半数に満たない限り,再生計画の認可が得られることとなっています。

この再生計画に従った支払いを終われば,残債務については免除を得られます。


2.給与所得者等再生手続

小規模個人再生を申し立てることができる人のうち,一般のサラリーマン等将来の収入が確実に把握できる人を対象とする手続です。

申立人は,自己の収入から所得税等や政令で定められた最低生活費を控除した「可処分所得」(節約して生活すれば貯金に回すことができるはずのお金と考えればよいと思います)の2年分を3年間で分割弁済することとなります。

この場合,再生計画の認可には,債権者の同意は必要ありません。


3.住宅資金貸付債権に関する特則

民事再生手続においては,別除権の行使は原則として制限されていません。

ちょっと言葉が難しいですが,ローン中の自宅を有したまま,民事再生を申し立てると,原則として自宅が競売にかかってしまうということです。

そこで,個人再生手続においては,住宅ローンの支払方法の変更を債権者の同意なく認めて,自宅を失うことなく経済的再生を図れるようにしました。

但し,支払期間の延長は最大10年間であり,年齢的にも70歳までに支払を終える内容でなければなりませんし,利息の変更はなされませんので,期間を延長した分総支払額は確実に増えることになってしまいます。


以上が,個人再生手続の概要です。


個人的な見解ですが,個人再生手続には,教科書的にいわれている自己破産との違い以外に,申立人にとって,計画通りに債務の支払をすることによって,借金を踏み倒したという罪悪感を背負わなくて済み,支払いをする中で計画的にお金を使い,無駄遣いを止める習慣が身につくなど,その後の人生を再生するのに有益なメリットがあると思います。

自己破産と個人再生手続は,自由に選択できる制度となっていますが,安易に自己破産を申請する前に,個人再生手続の利用を検討してみてはいかがでしょう。

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