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弁護士田邊正紀
待ちに待った,消費者契約法が,平成12年4月28日に成立し,平成13年4月1日から施行されることとなりました。
消費者契約法は,「事業者と消費者が有する情報量や交渉力に差があることを考慮して,消費者が判断を誤ったり,押し付けられて契約してしまった場合に,契約の取消権を認めるなどして,消費者の利益を守ることを目的とする」法律です(第1条要約)。
具体的には,この法律が施行されることによって,契約を締結するについて重要な事項について嘘の事実を告げた場合,将来における変動が不確実な事項につき,「絶対である」という判断を提供した場合,契約において重要な事項について,良い面のみを告げ,悪い面をわざと告げなかった場合には,消費者は契約を取り消すことができることとなりました。
例えば,「この株は将来絶対値上がりする」と業者に勧められて株を購入したら,値下がりしてしまった場合,「保険料が安くてお得ですよ」と言われ,傷害保険に加入したら,免責事項が多く補償される場合が極端に少なかった場合などは契約を取り消すことができることになると思われます。
また,自宅にセールスマンがやってきて,「帰って欲しい」と言ってもなかなか帰らないため仕方なく契約した場合,事業者の事務所で行われている説明会に参加したら「帰りたい」と言ってもなかなか帰してくれず,仕方なく契約してしまった等の場合にも,契約が取り消せることとなりました。
いずれの場合も,契約の取消期間は,上記の事実が判明したときから6ヶ月間ないし契約成立のときから5年間です。
さらに,この法律は,事業者に,契約条項をわかりやすくし,消費者が理解できるような説明をする努力をすることを義務付け,事業者の損害賠償義務を免除する条項・不当に高額な違約金を定める条項・消費者の利益を一方的に害する条項等を無効とすることも定めました。
この規定によって,例えば,自動車の売買において,欠陥によって事故を起こしても損害賠償をしないという条項・月謝制の英会話学校において,途中でやめる場合には半年分の月謝を払わなければならないとする条項・全国に事業者を展開している会社が,訴訟をする場合の裁判所を本社のある札幌地裁のみと定める条項等は,無効とされるものと思われます。
しかしながら,この法律は成立当初から,事業者の情報提供を努力義務としかしていないこと,取消権の範囲が狭く行使期間が短いこと,無効となる契約条項を限定しすぎていること等の問題が指摘されており,施行後の状況に応じて,5年を目途に見直しが行われることになっています。
消費者の方は,自分が締結した契約が不当だと考えるようになった場合には,速やかに専門家に相談しましょう。
また,事業者の方は,契約締結の方法や契約内容がこの法律に触れることのないよう事前に十分注意して契約をしましょう。
この法律が施行されたことに伴う予防効果として,事業者と消費者の間の契約のトラブルが減ることを期待してやみません。
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