新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

(改正)少年法〜平成13年4月1日施行〜

少年法改正〜少年に厳罰を!?〜

平成12年11月28日に少年法が改正され,平成13年4月1日から施行されることとなりました。改正の方向性としては,明らかに少年に重い刑罰を科すことに主眼がおかれています。少年犯罪が増加していると言われている昨今の状況からすれば,一般市民の皆さんの多くは賛成意見をお持ちだと思いますが,さまざまな問題も指摘されています。


以下,主な改正点について,賛成,反対両者の視点から概観してみることにします。

1.14歳以上なら刑事処分を科すことができる。

これまでは,どんなに重大な犯罪を犯しても,検察官送致され,刑事裁判を受けて刑罰を科されるのは,16歳以上の少年でしたが,改正法では14歳以上の少年に刑罰を科すことができるようになりました。この点は,若年層の犯罪が凶悪化し,成人と同様の刑罰を科す必要性があるという意見がある反面,成人に比べ判断力が劣り間違いを犯しやすい少年から更生の機会を奪うという意見があります。私は個人的には,年齢引き下げ自体には賛成ですが,安易な適用は控えるべきだと考えています。


2.少年鑑別所に約2ヶ月間拘束できる。

これまでは,犯罪を犯した少年等を審判するのに必要な場合でも,最大4週間少年鑑別所で生活させて生活状況を観察することしかできませんでしたが,改正法では最大8週間まで少年鑑別所で生活させることができるようになりました。この点は,犯罪を犯した少年は,8週間ぐらい不便な生活をすることを我慢すべきだとの意見がある反面,少年の学校生活等を考えると8週間は長すぎるとの意見があります。私は個人的には少年鑑別所収容期間の延長には反対です。なぜなら,犯罪を犯した成人ですら起訴されるまでには最長23日間しか身柄を拘束できないことを考えると,あまりにもバランスを失するからです。23日間というと短いようですが,毎日毎日同じことを繰り返し質問されると,大人でも耐えられない人がほとんどです。


3.少年審判に検察官が立ち会うことができる。

これまでは,少年審判においては,少年本人の他,裁判官,調査官,保護者,場合によっては,付添人(弁護士)が立ち会って審判が行われていましたが,改正法では,一定の場合に検察官が立ち会うことができるようになりました。この点は,凶悪な少年犯罪については検察官が審判に立ち会って,事実をはっきりさせるべきだという意見がある反面,少年を攻め立てる検察官が立ち会ったのでは少年は自分の気持ちをきちんと話すことができないという意見があります。私は個人的には,検察官の少年審判への立会いは反対です。なぜなら,刑事裁判では関係者の供述証拠は裁判への提出を拒むことができますが,少年審判ではこれを拒むことができないため,検察官が少年に不利な証言ばかりを用いて少年を攻め立て,少年が不当に重い処分に導かれてしまう可能性があるからです。


4.被害者の権利が一部認められた。

少年審判は,これまでまったくの密室で行われてきましたが,改正法では,審判の公開はしないものの,被害者の意見陳述の機会を認め,裁判結果の通知や審判記録の閲覧ができるようになりました。この点については,被害者の泣き寝入りを防止し,少しでも被害回復が図れるようにすべきだという反面,少年のプライバシーの権利保護が薄くなるという意見があります。私は,この点については,基本的には賛成です。罪を犯した少年の顔写真を公開することは必要とは思いませんが,被害者の知る権利と加害者のプライバシーでは前者が優先することもやむを得ないと考えます。

私は,個人的な考え方を皆様に押し付けるつもりはありませんし,弁護活動(少年の場合には付添人活動)をする際には,個人的見解に則った弁護活動はいたしません。ただ,少年犯罪を考える場合には,自分が少年犯罪の被害者になった場合だけではなく,自分の子供が犯罪を犯した場合,また自分が少年のころに犯罪を犯してしまった場合も想像して頂きたいと思います。

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