新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

新しい仲裁法〜平成16年3月1日施行〜

弁護士田邊正紀 

平成16年3月1日から新たな仲裁法が施行されました。これは,実質的に100年以上にわたり改正のなされなかった「公示催告手続及び仲裁手続に関する法律」の内容を一気に「国際商事仲裁模範法」に合致する内容に改めたものです。「仲裁」という言葉自体日本人には馴染みが薄いものですので,仲裁自体について少し見ていきましょう。


1.裁判と仲裁の違い

  裁判 仲裁
申立 当事者間に合意がなくても訴え提起できる 当事者間に仲裁合意が必要
判断者 担当裁判官 当事者が選任する仲裁人
手続規定 民事訴訟法などの法律 当事者が合意した方法ないし仲裁廷が定める方法
審理 原則として公開 原則として非公開
判断回数 原則として不服があれば3回裁判を受けられる(3審制) 原則として1回(不服申立が出来ない)
言語・準拠法 日本語・原則として日本法 言語・準拠法共に原則として当事者が選択する


2.仲裁のメリット・デメリット

1で見たように仲裁の最大の特徴は,当事者が自由に紛争解決方法を決められることです。仲裁人を当事者が選任することから,仲裁判断に対する納得が得やすく,専門性が必要な紛争の解決にも有利です。また,手続が厳格ではなく,一旦なされた仲裁判断に対して不服申立が出来ないことから紛争の早期解決が見込まれます。

逆に仲裁合意をしてしまうと公開の裁判を受ける権利はなくなり,非公開の仲裁廷で1発勝負の紛争解決を行わなければなりません。


3.仲裁合意の出来る紛争

仲裁合意は,当事者が和解を出来る民事上の紛争すべてについて原則として行うことが出来ます。以下の例外を除いて,ほとんどの民事紛争について仲裁合意が出来ると考えてよいでしょう。

[例外1]離婚などの身分関係事件

身分関係の変更は最終的に本人の意思にゆだねられるべきであり,第三者がこれを判断するのは裁判所に限ることとしたためです。

[例外2]消費者と事業者の間の仲裁合意

仲裁合意は,裁判を受ける機会を奪うものですので,当事者間に力の差のあるこのような契約については将来の紛争について定めた仲裁合意の解除が認められています。

[例外3]個別労働紛争に関する仲裁合意

雇用契約を締結する際に,仲裁合意をさせられてしまうとリストラにあった場合等に裁判を受ける権利が奪われてしまいますので,このような仲裁合意を無効と定めています。


4.現在の仲裁機関

国際紛争に関する「社団法人国際商事仲裁協会」,特許などに関する「日本知的財産仲裁センター」,海難事故などに関する「社団法人海運集会所」などが有名です。各県の弁護士会のうちいくつかは「仲裁センター」などを運営しています。愛知県弁護士会(平成17年4月に名古屋弁護士会から改名)も「あっせん仲裁センター」を運営しています。

新しい仲裁法の施行により,仲裁が裁判・調停などと並ぶ紛争解決手段となることが予想されます。自分の身に起こった紛争の解決にどのような手段が向いているかよく検討しましょう。わからない場合には身近な弁護士に相談してみましょう。

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