新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

民事訴訟法改正〜平成16年4月1日施行

弁護士田邊正紀 

平成16年4月1日から改正民事訴訟法が施行されました。今回の改正のポイントは,1,計画審理の本格的導入 2,提訴前の証拠収集手続の拡充 3,専門訴訟への対応 4,簡易裁判所の機能充実です。では,それぞれ簡単に見ていきましょう。


1.計画審理

裁判所及び当事者(原告や被告)に適せかつ迅速な裁判のために訴訟手続を計画的に進める義務が規定されました。そして,医療関係訴訟のような専門訴訟や公害訴訟のような大規模訴訟など裁判が長期化するおそれのある事件については,具体的な「審理計画」を作成しなければならなくなりました。これによって,「10年間の裁判闘争ついに決着」などという気の遠くなるようなニュースが減ることが期待されています。


2.提訴予告通知制度

裁判を起こそうとする人が「提訴予告通知」というものを行うことにより,4ヶ月以内に限り「当事者照会」(相手方に対する質問状の送付)と「証拠収集処分手続」(裁判所の決定による証拠収集)ができることになりました。これまでは,裁判が係属した後にしかできなかった証拠の収集方法を「提訴予告通知」を条件として,裁判前にも行えるようにしたものです。これによって,裁判の迅速化が実現すると考えられています。この制度が他の目的に悪用されないことを願います。


3.専門訴訟

裁判所が必要と判断した場合に,専門的な知識に基づく「説明」を聞くために「専門委員」を裁判に関与させることができることとなりました。これまで裁判官は,医療や建築など専門的な知識を要する事件についても誰の力も借りることなく訴訟を進行させなければなりませんでしたが,この制度によって,「専門委員」の「説明」を聞きながら訴訟進行の判断ができるようになりました。「専門委員」制度は,「鑑定人」に似ていますが,鑑定人は裁判所からの依頼により,具体的な事柄について専門的知見に基づいて自ら具体的な「意見」を述べるのに対し,「専門委員」は一般的な「説明」をするだけである点が異なります。

もう一つの専門訴訟での改正点が,「特許権」「実用新案権」などに関する訴訟は,東日本は東京地方裁判所,西日本は大阪地方裁判所に提起しなければならなくなったことです。これら2つの裁判所は,知的財産権関係事件のみを扱う専門部を設置していて,迅速に充実した審理を行うことができることから,今回の改正となりました。なお,著作権(プログラム著作権は除く),商標権,意匠権などは,これまで通り各地方裁判所に訴え提起できるほか,東日本は東京地方裁判所に,西日本は大阪地方裁判所にも訴え提起できることとなりました。


4.簡易裁判所

簡易裁判所への訴え提起できる金額が,90万円を超えない場合から140万円を超えない場合に拡大されました。また,弁護士を雇わなくても自ら裁判を行うことが比較的容易な少額事件訴訟を提起できる金額についても,30万円から60万円に引き上げられました。

今回の改正で,少しでも裁判が使いやすいものになることを望んでやみません。

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