新法令・判例紹介

 

新法令・判例紹介

改正民法〜平成17年4月1日施行〜

弁護士 青山正和

平成18年03月31日 掲載

 平成16年12月1日,改正民法が公布され,平成17年4月1日施行されました。
改正民法のポイントは次のとおりです。

第1 概略

1 各条文の現代語化
 これまで古めかしい片仮名,文語体であったのが,分かりやすい平仮名,口語体へと改められました。

2 保証契約の適正化
 個人の保証人が過大な責任を負う傾向にあった保証契約(特に根保証契約(一定の範囲に属する不特定な債務を主たる債務とする保証契約のことです))について,その責任を軽減ないし明確にし,契約内容の適正化が図られました。


第2 ポイント

 改正点について,若干説明します。

1 民法の現代語化について
(1) 文体が平仮名化及び口語化され,民法が国民に理解しやすく,かつ親しみやすくなりました。

(2) 用語が簡潔なものに改められました。例を挙げると,「僕婢(ぼくひ)」が「家事使用人」に,「薪炭油(しんたんゆ)」が「燃料及び電気」に,「疆界(きょうかい)」が「境界」に,「囲繞地(いにょうち)」が「その土地を囲んでいる他の土地」に,「溝渠(こうきょ)」が「溝,堀」などに改められています。改正の趣旨から,それぞれの言葉の意味は同じとされていますが,具体的な事件では解釈に変更が生じる可能性もなくもありません。

2 保証契約の適正化
 融資に関する根保証契約(貸金等根保証契約)を締結した個人の保証人を保護するため,次のような措置が講じられました。

(1) 極度額(限度額)の定め
 極度額の定めのない根保証契約は無効となります。すなわち,個人と貸金等根保証契約を締結する際は,必ず極度額を定めなければなりません(後記第3・3参照)。

(2) 元本確定期日(保証期間の制限)
 根保証をした保証人は,元本確定期日までの間に行われた融資に限って保証債務を負担することになっています。元本確定期日は,貸金等根保証契約で元本確定期日の定めがあるときは契約日から5年以内,契約で定めがない場合には契約日から3年後の日です。これにより,保証人の責任が限定されることになります。

(3) 元本確定事由
 主たる債務者や保証人が,その財産について債権者から強制執行を受けた場合や,破産手続開始決定を受けた場合,あるいは死亡した場合などには,根保証をした保証人は,その後に行われた融資について,保証債務を負担しません。これも,保証人の責任を限定するものといえます。

(4) 書面の作成
 根保証契約を含む保証契約は,契約書などの書面でしなければ無効になります。これは,一切の保証契約が対象となります。今後は,口約束ではいけないということです。

第3 補足

1 貸金等根保証契約について契約日から5年を超える元本確定期日を定めた場合,元本確定期日の定めは効力を生じず,元本確定日の定めがないことになるので,契約日から3年後の日が元本確定期日になります。

2 貸金等根保証契約の締結後に元本確定期日を先に延ばす変更は可能ですが,債権者と保証人との合意が必要ですし(どちらか一方が勝手に変えてしまうことはできません),変更後の元本確定期日はその変更の日から5年以内の日でなければなりません。

3 極度額の定めのない根保証契約は全て無効というわけではなく,主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれており,かつ,保証人が個人である場合に,極度額の定めのない根保証契約(貸金等根保証契約)が無効になるのです。

4 改正法施行前に締結された貸金等根保証契約は,極度額の定めがなくとも直ちには無効になりません。ただし,改正法の施行後3年が経過しても元本が確定しないものは,施行日から3年を経過する日に元本が確定するとされています。したがって,改正法の施行前に締結された貸金等根保証契約の保証人は,元本が確定した後の融資については保証債務を負いません。

 実は,皆さんの日常生活に密接に関わる民法。ここに掲げたのは,民法典の中のほんの一部にすぎません。この機会に条文を読んでみてはいかがですか?何か生活上のヒントが見つかるかも??

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